金木犀の香りとアケビの実は誘い心
金木犀の甘い香りが私の鼻の先端あたりにもやもやと絡みつく。
低気圧のせいか、風のまったくない夕方のよどんだ空気中にあって甘い香りがやけに強烈だ。
だからと言って嫌いな匂いではないので、思わず鼻一杯に吸い込んだそのよどんで濃縮された香りが
一瞬私を夢心地の世界に引きずり込む。
たとえ香りといえども、人間の心をかき乱す作用があるのを否定しきれない。
単純な性格だからか、私の心は簡単に別世界に突き進んでしまうのだ。
優しい黄色の衣を纏った貴婦人が何故か我家の庭に立ちすくみ、私のそばに来ておくれ!
とでも言っているように、ゆっくりと優しく「おいで、おいで・・」と手招きしているのだ。
優雅に上下する抜けるような白い指先から醸し出されるほのかな香りに、ついふらふらと
夢遊病のように私は庭に誘い出されてしまったようだ。
とそのとき、この不埒者!!とでも言われたのか、ゴキンと頭を叩かれた。
ハッと気が付いてよく見ると、庭の片隅にあるアケビの実が頭に当ったのだ。
お、おみゃあさん なにしやあす!ご主人様の頭を・・・?
と、心で叫んで見上げると、頭が当って割れたのか自然に割れたのか分からないけれど、
とにかくパクリと口をあけたアケビの実が何個も鈴生りになっているではないか!
しかも今まで見たこともない美しい色合いで・・・。
私は何故かアケビが大好きで、毎年秋にはあちこちに出かけてはアケビ鑑賞をする。
しかし、自然の中にあるアケビはどれもこれも汚れていてとても美しいとはいえない物ばかり。
時々デパートなんかで見かけるアケビは形もよく色もとても美しいが、やはり栽培ものなのだ。
昔見たその美しさが忘れられず、天然物を見つけようと随分あちこちしたが、
今まで一つとして完璧な物にはめぐりあえなかった。
そこで庭に種をまいておけば実がなるかもしれないと考え、蒔いた結果がこれ。
気付かないうちに立派な実をつけていた。
自然の山あいと庭ではどう違うのか、不思議と美しい肌合いと色を見せてくれている。
これは三つ葉アケビで少し大きめの実がなる。
鳥や虫につつかれないうちに、早速切って自作の花器に活けてみたが、う~んぜんぜん様にならない。
重すぎてどうにもならないのだ。
そこで小さめの物を切って、壁掛け型の顔形の花器にたらすように挿してみたのが右の写真。
右端の可愛いミニ掛け軸が、また綺麗に色づいて割れたアケビに向かって「ウッフン」と
誘惑するがごとく掛かっているのが可愛いと思いませんか?皆さん。
(ホームギャラリー土暖亭にて)
作品の詳細は左サイドバーに記載のホームページからご覧いただけます。
お問い合わせはホームページ内のメールもご利用いただけます。
マンジュシャゲの次はアケビですね。
田吾作さんの、すごい想像力には恐れ入ります。
それにしても文才まであって、欲張りですよ~。
by (2007-10-09 18:30)
目の不自由な友が庭の向こうの遠くから風に運ばれてきた
香りに「沈丁花が咲いてるね」といった事があります。
人の五感ははなくしたものを補うに余るものがあるのですね。
田吾作さんの洒脱な作品と文章にも魅せられますが弟様の
作品にも感動させていただきました。
今、我家の玄関先にも金木犀が深い香りを放っています。
by むらさき (2007-10-09 22:03)
先日近所の方にアケビを頂きました。とても甘くて素朴な味が大好きで、毎年この季節を楽しみにしています。壁に飾られたアケビもどこか趣があって素敵ですね♪
by amy (2007-10-09 22:52)
タクさんこんばんわ!
私の想像力がすごいって本当ですか?
私は記憶力ゼロなんで、想像だけで生きているんです。
文才があって欲張りなんて・・・
よく張ることがあるのはお腹ですけどね?食べ過ぎて。
むらさきさんこんばんわ!
五感の中に想像は含まれていませんが、想像は五感をさらに増幅させ
新しい創造に結びつくと思いませんか?
なくして初めて気がつくことが多い中、不自由になって初めて描けた絵や
感じることもできる」のが不思議ですね。
amyさん始めまして。
アケビは種ばかりですが結構甘くていいですね。
実は今日も食べましたが、皮の部分も揚げ物とかにできるそうですね。
by 田吾作 (2007-10-10 00:29)